ブナ(山毛欅、橅、椈、桕、橿 学名:Fagus crenata Blume[1])は、ブナ科ブナ属の落葉高木[2][3]。落葉広葉樹で、温帯性落葉広葉樹林の主要構成種、日本の温帯林を代表する樹木[3]。種小名の crenata は、「円鋸歯状の」を意味する[4]。
中国語で「山毛欅」とは、本種ではなく中国ブナの一種を指す。「橅」は近年作られた日本文字で、一般に(日本)ブナの意味に使われている。「椈」も中国ではブナの意味は全くなく、檜の意味ならあるが、日本ではブナの意味に使われることがある。別名が、シロブナ[2]、ソバグリ[3]。
木材としてはビーチと呼ぶ。
高さ30 mほどに達する落葉高木[2]。樹皮は灰白色できめが細かく[2]、よく地衣類などが着いて、独特の模様のように見える。若い枝は褐色で光沢がある[2]。葉は互生し楕円形(長さ4-9 cm、幅2-4 cm)[3]で、薄くてやや固め、縁は波打っていて、鋸歯というよりは葉脈の所で少しくぼんでいる感じになる。秋には黄葉し、その後落葉する。冬芽は褐色の鱗片に包まれ、茎が伸びた後もそれがぶら下がっている。芽から展開した若葉には長い軟毛があり、後に無毛となる[3]。
雌雄同株で、5月ごろに葉の展開と同時に開花する[3]。雄花は枝先からぶら下がった柄の先に6-15個付いて、全体としては房状になる[2]。雌花は本年枝の上部の葉の脇からしっかりした柄の先に上向きにつく[2]。果実は総苞片に包まれて10月頃に成熟し[3]、その殻斗が4裂し散布される。シイの実の表面を少しトゲトゲさせた感じである。殻斗に包まれた2個の果実(堅果)は[2]、断面が三角の痩せた小さなドングリのようなもの。しかしながら、中の胚乳は渋みがなく脂肪分も豊富で美味であり、生のままで食べることもできる。なお、ブナの古名を「そばのき」、ブナの果実を「そばぐり」というのは、果実にソバ(稜角の意の古語)がある木、ソバのある栗の意である。タデ科の作物ソバ(蕎麦)の古名を「そばむぎ」といったのと同様である。
ブナは生長するにしたがって、根から毒素を出していく。そのため、一定の範囲に一番元気なブナだけが残り、残りのブナは衰弱して枯れてしまう。ところが、一定の範囲に2本のブナが双子のように生えている場合がある。これは、一つの実の中に2つある同一の遺伝子を持った種から生長したブナである。
温帯の山地に生育する[2]。 ブナは攻撃的な広葉樹と評されるほど[5]、ほとんどどのような土壌でも旺盛に繁茂し、密に茂る樹冠によって他の木々の成長を阻害する。ドイツでは人間が管理せず森の成長を自然に任せた場合、ドイツの大部分はブナ林かブナの混交林になると考えられている。
日本では北海道南部、本州、四国、九州に広く分布し[2]、低山の照葉樹林帯と、亜高山の針葉樹林帯の間にはブナ林が成立する。雪が多い日本海側の山地と、奥羽山脈の背稜近くでは、天然林に近いブナ林が広範囲に広がっていたが、戦後大規模に伐採されてしまった。世界遺産に登録された白神山地のブナ林は、保護運動の抵抗により、まとまった天然林としては最後に残った所である。太平洋側に降りると純林はあまり見られず、ミズナラなど他樹種との混交林を作る。
本州中部では、ほぼ標高1,000-1,500 mまでの地域がブナ林となる。日本北限のブナ林は、一般的には北海道黒松内町のものが有名であるが、実は最北限のブナ林は隣町の寿都町にある。また、日本のブナの離島北限は奥尻島である。一方、南限のブナ林は鹿児島県高隈山にある。
白神山地以外の広範囲のブナ林としては、岐阜県・石川県・福井県・富山県にまたがる白山、福島県只見町周辺に、広大なブナ林を見ることができる。(坪田和人著、「ブナの山旅」「続・ブナの山旅」による)
ブナの果実は多くの哺乳類の餌として重要であり、中世のヨーロッパではブナ林で養豚が行われていた[5]。日本では2003年はニホンツキノワグマが多数里に出てきたことで知られるが、この年はブナの不作の年でもあった。しかしブナは基本的に毎年不作であり、5-10年に一度豊作になるだけである。さらに、ブナがより不作だった2004年には出没例は2003年より少なく、全国的に過去に例がないほどのブナの豊作となった2005年にはクマの出没が増加した地域と減少した地域があった。以上から、ツキノワグマの出没とブナの豊不作は必ずしも相関がないとの説もある。
ブナの葉にはタマバエ科の昆虫による虫こぶがつきやすく、26種の虫こぶが知られている[6]。葉の分解は非常に緩慢であり、その分解が細菌によってなされる環境では土壌は改善されるが、主にキノコによって分解される環境では酸性の粗腐植が作られ、他の土壌生物の土壌を改善する活動を阻害する。そのため、森の養母とも称えられるが、粗腐植の主要因としてネガティブな評価を受けることもある[5]。
ブナの木は非常に重く川を流して搬出することが困難なことから、商取引には向かない資材だった[5]。その上、腐りやすい上に加工後に曲がって狂いやすい性質があり、20世紀の後半まで用材としては好まれなかったが、薪のほか、下等品のための需要はあった。
日本では平安時代後期から鎌倉・室町時代にかけては、上質のケヤキにかわるものとして、漆器の椀・皿の普及品の材料として欠かせないものであった[7]。キノコ栽培の原木にも利用されている[3]。
ブナ材は他の資材に比べ重量に対する引っ張り強度に優れた特性があり、20世紀には薬品処理と合板の接着・加工技術の向上によって需要が増えている[5]。日本ではブナの伐採後にスギが植えられてブナ林が縮小した。ただ、曲げに適しているため、家具の脚に好まれる。また円筒形に曲げやすいことから、太鼓類の胴としても利用される。紙パルプ、家具材[3](主に脚物家具)、スキー板、ベニヤ材、玩具材、楽器の鍵盤、ブラシの柄などに用いられている。
日本では以下が、天然記念物として国の文化財の指定を受けている[8]。
日本の温帯林を代表する樹木で[3]、以下の市町村の木に指定されている。
八甲田 南股山付近 ブナ林(3月)
ブナ(山毛欅、橅、椈、桕、橿 学名:Fagus crenata Blume)は、ブナ科ブナ属の落葉高木。落葉広葉樹で、温帯性落葉広葉樹林の主要構成種、日本の温帯林を代表する樹木。種小名の crenata は、「円鋸歯状の」を意味する。
中国語で「山毛欅」とは、本種ではなく中国ブナの一種を指す。「橅」は近年作られた日本文字で、一般に(日本)ブナの意味に使われている。「椈」も中国ではブナの意味は全くなく、檜の意味ならあるが、日本ではブナの意味に使われることがある。別名が、シロブナ、ソバグリ。
木材としてはビーチと呼ぶ。