ヘリコバクター・ハイルマニ(Helicobacter heilmannii)は、胃粘膜組織中に存在するピロリ菌ではない螺旋菌である。イヌ、ネコ、ウサギなど人以外にも感染する[1]。ヒトに感染するとピロリ菌同様に慢性胃炎、胃潰瘍、胃癌を引き起こすことが知られている[2]。
1984年にオーストラリアのロイヤル・パース病院のロビン・ウォレンとバリー・マーシャルという2人の医師によって、ピロリ菌が発見された3年後に当たる1987年、ドイツ人の医師ハイルマンが、上部消化管症状を持つ患者に行った内視鏡検査で、0.25%の患者の胃粘膜組織中に「ピロリ菌ではない螺旋菌」が存在することを発見した。ハイルマンの名前にちなみ、ヘリコバクター・ハイルマニイと命名される。ヘリコバクター属の細菌は、30種類以上が発見されており、近年に至り、人に感染するピロリ菌以外のヘリコバクター族で細菌を、広義に“ハイルマニイ”と呼ばれるようになった[3]。
マウスを用いた実験では、病原性や感染力が強いことも判明しており、ウレアーゼ活性がないため、ピロリ菌検査では発見できない。このため、ピロリ菌検査で陰性でも胃炎が続く場合は、ハイルマニイの感染が疑われることがある[3][4]。 慢性胃炎患者の0.2-6%から検出されるが、特異的な診断方法は確立されておらず、組織切片中の大型のらせん状形態を示す細菌の存在をもとに感染診断が行われる[2]。
人がピロリ菌に感染していなくても胃がんを発症するケースでは、イヌ、ネコなどペット経由でハイルマニイに感染したことが原因となる可能性が指摘されている。北里大学の中村正彦教授らは胃がんの一種である胃MALTリンパ腫の患者の約6割が、ピロリ菌陰性でハイルマニに感染していることをつきとめた。ペットからの感染を避けるには粘膜と粘膜を接触させたり、口移しで餌を与える行為、キス、一緒にお風呂に入ることなどを避け、また排泄物、吐しゃ物の処理にも手袋使用と処理後の手洗いなど細心の注意を払わねばならない[1]。
ヘリコバクター・ハイルマニには、以下のような特徴が存在する[3][4]。